ガードマン(?)
2011年03月09日更新 皮モノ・オリジナル
暁晃(著)俺を眠りから目覚めさせたのは一本の電話だった。
「ふわぁ。仕事か……」
ベッドから起きて受話器を取る。そこから聞えてきたのは聴きなれた声だった。
「仕事だ。すぐに本部に来い」
「了解……」
俺は寝まきを脱ぐと、手短にハンガーに干してあった背広を着て出かけた。俺が根城にしているボロアパートから少し歩くと、桜並木があってそこを通る。時期は三月の中旬。蕾の桜が今か今かと開花を待っている。三月下旬から四月にかけて、この花は開き、入学生や新入社員を出迎えるのであろう。
「ま、俺には関係ない事だがな」
俺の名は貴崎(きさき) 真(ま)護(もる)。年齢は24歳。少しばかり特殊な職業をしている。しばらくして、コンクリート建ての立派なビルに着く。ここが俺の職場だ。受付にIDカードを渡し、俺は“本部”がある十三階へ向かう。
「お早うございます」
「おう。リーダーがお呼びだ。すぐに行け」
そこには、さっきの受話器から聞えてきたいかつい声の男がいた。俺の上司、久志(くし)田(だ) 岩(いわ)雄(お)だ。身体は俺の二倍くらい大きい大男でそれに似合う厳つい顔をしている。そこで俺は彼の言葉に疑問を持った。
「リーダーから直属にですか?」
「ああ。何でも、大きな仕事らしいからな。お前は期待のエースなんだ。胸を張って引き受けてこい」
「はい」
この仕事を七年ほどやっているが、今回の様にリーダーから直属に仕事が来る事なんて滅多にない。俺は気を引き締めてリーダーの居る社長室へ行く。社長室の扉にはこの組織のシンボルマークであるギリシャ神話の女神、アテナの横顔が小さな金細工で付いている。俺は少し緊張しながら、その扉を叩いた。
「貴崎真護、エージェントno,324。コードネーム“オハン”来ました。」
「入って頂戴」