2011年05月25日更新 憑依(?)・二次創作・魔法少女
toshi9(著)SKN(画)
2011/06/10 10・11話追加しました
2011/06/18 最終話掲載
『魔法少女になりたくないかい?』
「え?」
俺は足取りを止めて、きょろきょろを左右を見回した。
だが、俺の周りには誰もいない。
いや、人はいないが、歩道脇に耳の長い猫? いや子犬か? とにかく白い小動物が一匹いた。そして俺のほうをじっと見ているんだが……まさかね。
「気のせいか」
俺は頭をポリポリをかくと、再び駅に向かって歩き出した。
そして俺を見続けている白い小動物の前を足早に通り過ぎて駅に着くと、家へと向かう電車に乗る。
ゆっくりと横に動き出す車窓。
俺はそれをぼーっと見ていた。
「はぁ~、今日も疲れた」
俺の名前は三ッ木晃、25歳の独身、小さな不動産投資会社に勤めている。
3年前に親のつてで首尾よく就職できたのだが、長い不況で、なかなかマンションの契約が取れない。
会社の業績が年々下がっていることもあり、上司からのプレッシャーはきつくなるばかりだ。
「はぁ~」
流れる車窓を見ながら、俺は再びため息をつく。
「俺、この仕事を続けられるんだろうか。契約取るなんて合ってないよなぁ。でも転職しようにも、こんなご時勢じゃできっこないしなぁ」
目線を落とすと、俺の前には女子高生が座っていた。
彼女は懸命に携帯にメールを打っている。
俺の視線などまるで気が付かない、いや無視しているんだろうか。
制服のスカートからむき出しの太ももがまぶしい。
(気楽なものだな。俺も悩みと無縁な女の子になってみたいよ)
目の前でメールを打ち続ける女子高生を見ながら、俺はその子になりきった自分を想像していた。
寒い中、震えながら待っていた電車がようやくホームに入ってきた。
ドアが開くと、ひとつだけ空いていた席を見つける。
左右に座っているおじさんが少しだけ気になるけれど、とにかく座りたい。少し急ぎ足で中に入ると、スカートの裾を気にしながら座ったんだ。
寒い中ようやく座った座席の暖かさを太ももの裏に感じながらほっとひと息つく。
そしてカバンから携帯を取り出してメールをチェックして、ようやく友達にメールの返信を打っているんだ。それが俺。