ヒダラ第二章
2011年4月27日 皮モノ?・オリジナル
K27(著) 今は力強い雨が木々や建物を荒々しく打ち付けている。さらりと木の葉が、揺れて落ちる程度の雨ではない。樹木は幹の根元から枝が折れて落つ。建物は横縦に揺さぶられている。天候は次第に豪雨となり、雷雨になり、暴風が出て、嵐となっている。
先ほどはカラっと晴天。雲一つ無かった空が嘘のようだ。まさに晴天の霹靂ではないだろうか。
そしてここ――周囲を原生林で囲まれている山々の中に一つの寺があった。決して広くも、狭くも無い。庭が存在する寺である。
唯、誰も住んで居ないのか、ぼうぼうとした雑草が彼処に生い茂っていた。人間の膝丈まである草なのだ。
寺には他にも特徴がある。鐘の紐が片方すす切れて、落ちかけている。
本堂の風除けとなる筈の瓦、壁や戸板には鼠が齧ったような歪な穴が開いていた。隙間風が所彼処に入り込んでいる。
この寺は俗に言う破れ寺だったのだ。処は尾張三山が連なる――丁度、本宮山と白山の山間部に位置している。
本堂の瓦屋根は辛うじてあるが、雨風を完全に防げる代物ではない。
そんな中で、雨宿りをしている者達がいた。男が四人、女が三人の計七人である。うち四人は床に付いていた。
だが、この嵐の中でも、特に懸念せず、酒を飲んではどんちゃん騒ぎをしている者達が三人いた。
三人が皆、熊みたいな巨躯をしており、年から年中顔やら腕やら脛から硬質な毛を隠さず、そう然と生やしていた。たまに足や腕を掻く仕草を見ると、虱(しらみ)や蚤(のみ)でもいるように思えてしまう。見るからに猛々しい男達である。
毛むくじゃらの男達は泥に塗れた編み笠や蓑を着込み、背中には火縄銃を背負(しょ)っている。どうやら猟師のようだ。
猟師達はささくれたった木床に胡坐を掻き、三人で囲むように飲み交わし談話していた。