身体探し2010年09月22日
憑依・
オリジナル・
小説K27(著)
身体探し――第一話 初めての霊体
憑依……が出来るまで?
K27 9月18日
何時からだっただろうか……。否、何時までこうしているんだろ、俺は――。一体――。誰だっけ?
俺は自分の名前をとうの昔に忘れていた。自分が何者で、何故ココに居るのかすら覚えていない。嫌、何者って点では、確証は無いが何となく覚えがある。だが、覚えがあっても知る術を持ち合わせていないのが現実。
そうだ、原因は……午前中、俺は“消失”してしまう所為にある。それは字の如く、消えて失ってしまうと言う意味。光輝な朝日と共に。
それでも、午後になると俺は一部の記憶だけは甦る。と言っても生活水準レベルの記憶だが。その一般的な記憶が戻り始めると時機に身体も戻り始める。肉体と記憶がセットで。地面に散らばった欠片が一つに纏まるように、集圧されて。
俺の魂が少しずつ、形を成して、復元。生命が息吹を上げる。この時点では、まだ完全では無いにしろ。
そして今現在――俺の瞳は曇り、何も映らないし何も見えていない。不完全な代物。それも太陽が紅く燃え染まるまでの辛抱だ。
陽光が落ち始めた頃には、俺の眼は確りと物が見え捉える事が出来る。俺の瞳に映るは素晴らしい町並み。
そして幾月、幾年、幾星霜も変わらぬ、あの鮮明で美景な夕焼け空が。雄雄しく俺の瞳を熱く焦がす。
景色を見る為、俺は好きでこの場所を動かず佇んでいると言っても過言では無い。……佇んでいるとは言ったが詳しく言えば、地に足は着いていない。それは俺だけが知っている理(ことわり)。一種の能力みたいなものだ。
俺としちゃあ今はどうでも良い。今はこいつ――深い年期を重ねた、薄汚れた学校と一緒に。錆び付いた鉄の校門前で、ただジッと眺める。あの茜色をした雲と空を。世界中どの場所で見ても、遜色ない夕陽を。優雅で其れでいて心を突き動かす。あの沈み往く様はまさに有終の美だ。
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