最強の拳法とは ――クククッ、オレはついに会得したんだ。古の伝説の拳法を……。
オレの眼下には、女の皮が転がっている。後ろに大きな穴を開けた裸の女子高生の皮だ。
もちろんオレの戦利品だ。これを使って……グヒヒヒ。
――本日は晴天なり。学校に用がない生徒は、速やかに下校して下さい。
スピーカーから聞こえる、体育教師の暑苦しい声。耳に痛いほど響く学校のチャイム。
ワタシ達はそこから逃げ去るように下校する。焦げ臭い匂いがする道を歩きながら隣の少女は言った。だらりと舌を出して。手をバタつかせている。
「アチぃ~ヨ。アイィーヨ。アジー!」
「ウルサイな。余計、暑くなるでしょうが、もう!」
ワタシ――晴海菜紀(はるみなのり)と二人の親友はアスファルトの地熱と蒸し暑い熱気で今にもグロッキー状態だった。
まったく、学校の帰り道だと言うのに、この暑さときたら、まさに地獄だ。ああ、燦々と輝くアイツが憎い。あームシャクシャする。
誰でもいいから殴りたい。例えば、隣にいるウザイこの女とか。よく見ると何か涼しそうだし。
「ねぇねぇ、ナノリンは何か持っていないの? 水とかジュースとか新品のド○えもんとか」
「持ってる訳ないでしょ。って、何でド○えもん? しかも新品って……何故に?」
「だって、だって、黄色を青色に染められるんだよ。スゴいっしょ。あのネコ型ロボットが耳を食いちぎられ、悶え狂う姿を考えるだけでゾクゾクしない?
まして、目の前で出来るし、見れるんだよ。それも生で! 絶対涼しいってきっと!」
そんなに目を輝かせ言われても、困るんだけど……。ワタシに何を求めているのこの子は? ワタシの口からは自然と溜息が出ていた。ワタシはこの女――弐鳴司(になりつかさ)に引き気味だったから。
見た目は、女性でも嫉妬しそうな可愛さだが、痛い事に少し電波が入っている。彼女は凛とした瞳をしてさっきからワタシを見てる。どうやらワタシの答えを待っているようだ。
ここはとりあえず、適当にあしらう事にしよう。
- 関連記事
-